ディマシュの祖国カザフスタンは、2018年より7月の第一日曜日を「ドンブラの日」に制定しています。
今年2020年はそれが昨日7/5でした。オンラインで大々的なイベントが催され、ディマシュも自身が過去にドンブラを演奏している動画をInstagramにアップしました。
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ドンブラはカザフの伝統楽器。
木製の胴と棹のある二弦楽器で、弦を撥いて音を出します。
ディマシュはソロコンサートでも必ずドンブラ演奏コーナーを設けます。
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ドンブラの演奏法は、手首を柔らかく下へ上へ、払うように動かしながら指で弦をはじきます。また、指先でつま弾いたり、楽器の胴を掌で打楽器のように打ち付けたり、棹を押さえる左手でもピチカートしたり、実に多彩です。
ディマシュは折につけ、このようなことを言います。
「ドンブラはカザフのどこの家庭にもあるもので、みんなの心の中で一番大事な楽器です。」
「ドンブラはカザフの心。魂です。カザフ人の心に畏敬の念を引き起こします」と。
遊牧という生活様式の中で、カザフの伝統音楽の最も基本的の形は、ドンブラによる独奏か、弾き語り/弾き歌いであり、口承文芸の一角に位置するものだったのです。
ディマシュもおじい様からドンブラの手ほどきを受けたと語っています。
大家族で暮らす生活様式が息づくカザフスタンで、上の世代から代々引き継がれていく、民族の伝統楽器。
若い世代がそこから学ぶものは、楽器の技術だけではなく、民族の歴史、民族の価値観、民族の心、民族の感情であるだろう事は容易に想像がつきます。
そのことは、民族全体としての共通原体験、民族全体としての原風景を形成するでしょう。それが「魂」と言う言葉に集約されているのではないでしょうか。
例として出す方向性が少し違いますが、私たち日本人の多くは、たとえ行ったことがなくても、田んぼが広がりヒグラシが鳴く日本の田舎の夕暮れの景色に、原風景、心象風景としての郷愁を抱くでしょう。同じ文化圏に育った共通のDNAの働きのようなものが、そこにはある気がします。
カザフの人々がドンブラと言う楽器を通じて作り出す共通心象風景も、そういう事なのかもしれません。
「大抵はどこの家庭にもあり、多くの人が演奏して【身近】でありながら、【畏敬】の念を引き起こさせる楽器」
しかしながら、現代の私たち日本人に、カザフにおけるドンブラのような位置づけの楽器があるかと聞かれれば、ちょっと思いつきません。
和太鼓や和笛、雅楽の調べなどには、日本人としてのある種共通の感情が沸き起こるかもしれませんが、「どの家庭にもあって身近である」ものではありません。
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民族共通の心の象徴として、そのような伝統楽器が存在すること。
カザフ人がドンブラを記念日の一つに制定してまで大切にするカザフの文化、精神遺産、アイデンティティ、またカザフの歴史について、ほんの少しだけ思いを馳せてみました。
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