いわゆる西側と言われた欧米では、芸能人はじめ有名人が積極的に政治的(社会的)発言をすることは珍しい事ではありません。もちろんそれを一切していない有名人も多いですが、社会的発言をする人々の存在もごく当然のこととして受け止められています。それには、個人の意見や信念をハッキリと表すことを是とする価値観のほかに、歴史的な経緯があります。
アメリカは第二次世界大戦後にハリウッドを中心として「喜劇王チャールズ・チャップリンの映画界追放」などのレッドパージが起こりました。
他の西側諸国でも同様のことが起こりました。これらは第二次世界大戦後の東西の冷戦が大きな背景になっています。
時代の政治の流れに翻弄されたそれらの暗い歴史を教訓として、同じ轍を踏まないよう、欧米のエンターテイメント界では、体制(公権力)に物を申す、監視する、意見を言う文化が、紆余曲折を経ながらも現在では一つの市民権を得ています。
戦後、日本でも、おもに1960年代、70年代前半を中心としてベトナム反戦や安保闘争などについてを(直接的ではなくても)歌詞に盛り込んだ反体制的なフォークソングが流行りました。若者の作る流行歌が世界や日本の社会のうねりと共にあり、一部の歌手(芸能人)が社会的メッセージを歌詞として物を申したひとつの現象です。
やがて経済の成長などと共に、そのような現象は日本では終息していきました。「政治色の強い・社会的発言をする」芸能人は、「好感度が低い」「売名的」などとされ、少なくとも日本国内では求められなくなっていきました。この意味では、欧米とは別の精神文化が形成されたのです。これは、国民性や日本の教育も大いに関係しているのかもしれません。
いま、SNSの発達とともに、日本の芸能人や有名人も自らの信念に基づき社会的な発言を公にすることが増えてきています。
大きなエポックメイキングは東日本大震災とそれに続く原発事故だったでしょう。
度を越した経済重視の政策や不手際と思われる政府の対応が個人の生活や人生に直結する具体的な場面を目の当たりにした人々が、SNS上で政治や社会の在り方に対して声を上げ始めました。
つい最近も検察庁法改正案に抗議する芸能人の声が取沙汰されました。それは一般人を巻き込んだ大きなうねりになり、政治を動かす世論にまで発展しました。
世間の注目を集めやすい有名な人々が声(信念)を上げ、それがどう受け止められ、どう取り扱われるかは、それぞれの国の歩んできた歴史や国民性、政治体制、文化、価値観、またその時の社会情勢・状況やタイミング、その人間の立場によって大きく変わるでしょう。
順風でも逆風でも、影響力が強い人々の声が巻き起こす風は、どこの世界でも一般人のそれよりも強いでしょう。そして、人々が声すら上げられない国家もこの世界には存在しています。
コロナウイルスの脅威がいまだ収まらない現在、ソビエト連邦から1991年に独立した若い共和国の、若い歌手が自身のSNSを更新し、声を上げました。
彼は祖国を代表する歌手として海外でも活躍しています。若い祖国を愛し誇りに思う気持ちに溢れ、自身の初めてのツアーではセットリストの一曲目に祖国に捧げる歌を選びました。
自国の「首都の日(前大統領の誕生日)」を祝い、盛大に打ち上げられた花火。これについてディマシュ・クダイベルゲンはSNSでハッキリと否定的な言及をし、それは若い彼の信念と感情をダイレクトに色濃く反映しています。
そのご紹介をして本日は筆を置きたいと思います。
【超大意】「命を救うための医療品がこれだけ不足している中で、花火なんかあげている場合じゃないだろう!」