もっと光を!Mehr Licht ! とゲーテは亡くなる直前にいいました。
もっとも、これは本当は死期が迫って目の力が失われたのか、暗いと感じたゲーテが『もっと光が入るように、寝室のよろい戸を開けてくれ』と召使に言ったのだそうです。周辺の人々の証言を端的に表したのは、主治医フォーゲル博士。いかにも大詩人ゲーテの最期の言葉らしくて、フォーゲル博士はナイス・センスと思いませんか?
旧約聖書の天地創造では「神は最初に『光あれ!』とおっしゃった。すると【光】があった。神はその光を見てよしとされ、光と闇とを分けられた。」とあります。
東日本大震災(2011年3月11日)では被災の中心地はあらゆるものが損なわれ、明かりも失われました。
当日の夜は月齢6日の月。まだ細い月が早々に沈んだ夜空は、星だけが輝いていたそうです。
この震災では、電力不足のために、日本の広範囲で大規模な節電対策がとられました。都心では幹線道路ですら街灯がまばら、沿道の店舗の明かりもない。夜、運転していると非常に心細くなったことを思い出します。いかに日常の生活が、当たり前のように光に満ちたものであったかを痛感する出来事でした。
光のない暗闇は恐ろしいものです。光は、希望そのものに直結する大切なものです。
話は変わりますが、Dimashの名前について書かれているものをよく見ます。お母様の名前「Светлана/SVETLANA」については、残念ながらほとんど見たことがありません。
カザフは父系制のお国柄ですし、また、スヴェトラナという名前の意味があまりに当たり前なのかもしれません。日本でも外国語に堪能な方ならご存知なのかもしれません。
7月15日はディマシュのお母様の誕生日です。少し早いですが、誕生日を記念して、お母様のお名前を調べてみました。
お母さまのフルネーム
Светлана Ермековна Айтбаева(Svetlana Ermekovna aitbaeva)
SVETA(Света)は、ロシア語で「光」だそうです! 光、光線、輝き。ラナは、愛らしさを表現しているとか。DJFCホームページのBIOGRAPHYの記述に倣えば、日本では、さしずめ「光子」「あかり」「輝子」さんetc.でしょうか。
カザフの伝統的な名前ではなく、ロシア系の名前とのこと。実は、そのロシアでもかなり新しい名前と言えるそう。
1800年代初めに詩的文学作品に初めて登場しました。しかし、ロシア正教会では聖人に由来を持つ名前しか認めない=洗礼が受けられない=ため、長らく「正式名」としては使えなかったそうです。
1900年代初頭10月革命以降、命名に教会の枷がはずれ、少しずつ広まった、当時としてはちょっと珍しい「スベトラナ」という名前は、独ソ戦争後、急速に人気が高まり、1960年~70年代にはトップテンに入るほどの大ブーム(最高4位)になりました。
のちには、スヴェトラーナから派生した「ラナ」が人気の名前になっていきます。
Ermekovana=「エルメクの娘」については、Ermek-は、「エンターテイメント、楽しみ 」の意味で、その子、あるいは孫の誕生が、その家族とっての喜び、楽しみであることを示します。スヴェタさんのお父さんERMEKが家族の宝だったことが偲ばれますね。
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命名に、教会の力が影響する宗教との関係は浅学で知りませんでした。国の事情、時代の変遷に伴い、名前に流行があるのは日本も同じですね。こどもの名前に夢や希望、幸せ、かくあれかしという親の願いを託すのも同じだなぁと思いました。
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スヴェトラナさんは、文字どおり、光輝く歌姫Divaになりました。
Divaはもともとラテン語の「女神」で、現代では特にオペラなど歌の世界で卓越した女性歌手をそう呼びます。
「光」+「女性の神様」といえば日本では「天照大御神」(あまてらすおおみかみ)です。
天つ神々の住む高天原(たかあまのはら)を統べる最高位の神様。太陽神です。天岩戸(あまのいわと)のお話は皆さんご存知でしょう。
スヴェタ→光→光輝く歌姫→女神→天照大御神と繋がって、華やかな「スベトラーナ」お名前探索の筆を置きたいと思います。
別記:天岩戸神話
天照大御神は、日本の神話の中で最高位の神。国を作った伊邪那岐命・伊邪那美命(イザナギノミコト・イザナミノミコト)の娘です。
弟の建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと 以下スサノヲノミコト)が、田を壊したり、乱暴狼藉があんまり酷いので、とうとう天照大御神は、怒って天岩戸(高天原にある岩の洞窟)に引きこもり、入口を大きな岩で塞ぎました。天上界も人間界も世の中は闇になってしまい、様々な禍(まが)が発生しました。八百万(やおよろず)の神々は困って、天照大御神を岩戸から出すため知恵を絞ります。岩戸の前で天宇受賣命(アメノウズメ)がおもしろおかしく踊り、皆(八百万の神々)が楽しそうに歌い囃し大笑い。岩戸のなかで「外は真っ暗闇のはずなのに、何をそんなに楽しそうに」と気になって仕方ない天照大御神は、とうとう、ちょっと、岩戸を開けて外を覗きます。
サーっと差し出づるまばゆい光。その瞬間、岩戸のそばに控えていた天手力男神(あめのたぢからお)が怪力で岩戸を引き開け、天照大神を引っ張り出します。こうして高天原と世界に再び光が満ちたのでした。岩戸には注連縄を張って、もう二度と天照大神が籠らないようにし、スサノヲノミコトは厳罰・追放。めでたしめでたし。
(寄稿:まつりか)