カザフスタン共和国は現在、国策の一環として、内外に向けて「カザフ文化の掘り起こし、広報」「カザフ文化活動」に力を入れています。
2018年に制定された「全国ドンブラの日」などもその一環ですね。
2020年8月10日は、カザフスタンでは「アバイ・デー」でした。
カザフスタンを代表する哲学者(詩人、作曲者)アバイ・クナンバイウル(Abai Qunanbaiuly)の生誕175年の祝日です。
在日カザフスタン共和国大使館のSNSアカウントでアナウンスがされています。
このように、国をあげての祝日になっています。
◆民間発祥のアバイチャレンジ
ところで、アバイ生誕175年を記念して、民間発祥のリレーチャレンジが昨年からネット上で行われていたことは記憶に新しいでしょう。
アバイの詩を朗読し、次の人へバトンを渡すというもの。
↓ 2019年(昨年)7月11日に、ディマシュも参加しています。
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↓ イゴール・クルトイ氏も同日に参加。
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◆公式行事のアバイチャレンジ
今年はカザフスタンでは様々な記念行事が、多くはオンラインで行われました。
その一つが8/17の「アバイワールドチャレンジ」。
世界の言語でアバイの詩を読む挑戦。
既に有名な民間発祥のチャレンジ(Dimashがおこなったもの)とは別で、今年の記念日のための公的行事で、リレー形式ではありません。
↓ ※8/17アバイワールドチャレンジの本編はこちら(約26分)
世界の様々な言語でアバイの詩が読まれています。
↓この中で、文化交流の一環として我が国の日本現代詩人会、山田隆昭理事長も参加しました。(抜粋)
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アバイさんの、美しいカザフスタンの春の詩を朗読されています。
◆アバイ・クナンバイウルについて
アバイ・クナンバイウル(1845-1904)は、カザフ人の中では敬愛をこめて「Abai」と呼ばれます。
単に詩人や哲学者、思想家としての扱いではなく、
カザフ人の民俗文化、目覚めた民族意識の象徴としてのアイコン的な人物であり、多くのカザフ人の心の拠り所になる韻文を遺しています。
20世紀はじめのカザフ民族主義運動に多大なる影響を与え、彼の作品群は、口承(口づての伝承)だったカザフの文芸に「文字による文学の伝統」を築きました。
ディマシュも自身のSNSの中で座右の銘的な扱いで登場させています。
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その生涯は映画やオペラの題材になっています。公式 ディマシュ ジャパン ファンクラブのSNSでも映画についてご紹介しました。
本日2020.8.10は #アバイ・クナンバイウル 生誕175年。Dimashが一緒に仕事をしているアカン・サタエフ監督代表📽️カザフフィルムQazaqfilm / Казахфильм スタジオでは🎞[ABAI] 始め関連動画の再生リストを用意しています。#Abai175 #カザフスタン #ABAI175 #DJFC
— 【公式】ディマシュ ジャパン ファンクラブ (@DimashJapanFC) August 10, 2020
公式YOUTUBE👉https://t.co/G3IAKigNm0
◆日本からのアバイワールドチャレンジへのもう一つの参加
アバイ・クナンバイウルの遺した作品群の中に、「黒い瞳」という詩・曲があります。今年の公式イベント、ワールドチャレンジの動画(前述、約26分)でも、全編にわたってBGMとして流れていました。
生誕175周年を記念した「アバイワールドチャレンジ」の一環として、和光大学の坂井弘紀教授(専門分野:中央ユーラシア叙事詩研究、中央ユーラシア文化史、中央アジア地域研究)がそれを翻訳、歌手の蘭華さんが歌った動画がありますのでご紹介します。
和風仕立てになっており、文化交流のひとつのかたちとして興味深い作品です。
(音楽と映像は蘭華さん所属のゼロスタで制作。)
↓ 在日カザフスタン共和国大使館公式チャンネルより
カザフの詩人、アバイ・クナンバイウルの歌「黒い瞳」を日本語でご紹介します。
【日本語歌詞 抜粋】
黒い瞳 こころの望み
胸の奥 癒えぬ愛の痛み
中略
私はうたう 涙に願う
告げるべき時に愛を誓う
心は動く 静かに響く
気付かないあなた
想いは熱く
↓ 蘭華さんオフィシャルブログ
↓ 国立ヌル・スルタン室内合唱団による「黒い瞳」はこちら
◆日本との違い
我々現代の日本人が、日本人のかつての詩人や哲学者に寄せる思いとは違う深さ、強さで、カザフの人々は「Abai」のことを扱っているように感じます。
それはやはり、カザフ民族の歩んできた歴史、帰属意識に「Abai」が深く象徴として紐づいているからなのでしょう。
アバイ・クナンバイウルは1904年に亡くなります。
その後ロシア革命がおこり、カザフ民はこの大きな歴史のうねりに否応なく巻き込まれて行きました。
カザフスタン共和国が国家として独立したのは、アバイの死後87年後、1991年12月のことです。
「民族的英雄」としてのアバイ・クナンバイウル(カザフ語/Абай Құнанбайұлы)。
歴史的な「民族的」英雄という概念が大変に薄い、またはほぼ皆無と言ってよい現代の我々日本人にとっては、中々実感できない部分が正直あります。
しかしながら、これを「理解しよう」と歩を進めることで、異国の民族の歴史や価値観、ひいては文化を学ぶ一歩に繋がり、相互理解への大事な道へ続いていくのでしょう。
私たちが愛するディマシュ・クダイベルゲンを育んだ精神文化の土壌を知る上での、ひとつの道しるべとし、本日の記事は筆を置きたいと思います。
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