ディマシュ・クダイベルゲン/ Dimash Qudaibergen  

公式 ディマシュ ジャパン ファンクラブ/Blog by Dimash Japan Fan Club Official

立春に寄せて ディマシュの歌う《万里梦同心》

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"万里梦同心"について

既にディマシュの公式動画には日本語字幕がつき、ブログでも何回か取り上げていますが、本記事では《万里梦同心》について、べースの古典詩そのほか公式動画の翻訳では表しきれなかった事などをもう少し掘り下げてまいります。

【目次】

◆福の到来を願い歌う"万里夢同心"


春在千門万戸中

"春は千門万戸の中に在り"

 

2022年2月4日立春ですね。

中国では、立春に一番近い“新月の日”が、旧暦の正月朔日。

今年は2月1日。

この日を春節といい、新暦の正月よりも盛大に祝われる旧正月の始まりです。

 

ディマシュが歌った"万里夢同心"という歌は、

最後に

「築得同心夢 千門万戸春」

 築くのは同じ心の夢  千門万戸、すべての家にめでたい春が来るように

とあるように、

福の到来を願う、新年や春節にふさわしい歌でもあります。

 

◆初披露、そして2回目

 

ディマシュの歌う《万里梦同心》は、2020年6月、"经典咏流传"という中国のテレビ番組で初披露されました。

番組の趣旨は、【古典詩をとりあげ鑑賞評価し、そのエッセンスを、今に通じる現代曲に蘇らせよう】というもの。

↓ ブログ内参考記事

dimashjapanfanclubofficial.hatenablog.com

そして、昨年の大晦日の番組「启航(出航)2022」で、張英席氏(国家一級歌手)とのパフォーマンスによって一年半ぶりに舞台で再び蘇りました。

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◆古典詩「送韦城李少府」について

 

中国で活動するDimashの中国歌詞の歌には、現代的なものや古典的なものがあります。

古典文学として漢文・漢詩に接し、言語的にも漢字文化圏である私たち日本人は、言語として中国語を勉強したことがなくても、中国歌詞の歌は漢字から通じるものが多くあり、歌詞そのものから視覚的、聴覚的に印象をある程度得る事ができますね。

一方、同じ"漢字"でも、日本と中国でまったく違うケースもあり、それもまた興味深いです。

 

この歌の下敷きとなっている古典詩は、張九齢「送韦城李少府」(唐詩)

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張九齢

●張九齢(ちょう きゅうれい 678年-740年)は中国唐代中期の政治家・詩人。

24歳で科挙最難関の進士に合格。玄宗の信を得た賢相、慧眼と清廉なる心の持ち主とされています。背も高く、見目姿のよい人だったそうです。

政治抗争のため59歳で荊州(現在の湖北省)に左遷の憂き目に遭い、この詩「送韦城李少府」は九齢晩年の荊州にいた頃のものとされています。

 

この漢詩は、漢字五文字/全8行です。

2行ずつを聯/れんと言います。

 

「送韦城李少府」(簡体文字/現代中国の文字のまま)

送客南昌尉,离亭西候春。
野花看欲尽,林鸟听犹新。
别酒青门路,归轩白马津。
相知无远近,万里尚为邻。

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◆「送韦城李少府」翻訳

 

では、これを日本語漢字に書き換え、解説込みの翻訳をします。

 

タイトル

「送韋城李少府」

「李少府を韋城に送る」

・少府:官吏の敬称。は詩人の友人の姓です。南昌県の尉官である李氏を李少府と呼んでいます。

県令(長官)を明府と呼び、県尉はそれよりレベルが下位になるため"少"が使われました。

・韋城(ウェイチャン):今の河南省滑県の南東にある地名

 

送客南昌尉

南昌の長官(尉)である客人の見送りである。

南昌(ナンチャン):南昌県。今の江西省南昌市 古くから発達した地。

 

離亭西候春

宴席を張ったこの街道沿いの駅亭(旅館)、西の辺りの季節はとっくに春である。

・亭:街道沿いに設けられた宿駅にある宿(駅亭)。比較的簡単な建物。旅人の見送りは泊りがけで途中まで同行し、送別の宴を開くのが慣習でした。

・西:古い時代の宴席では、東側に主人西側に賓客の座を設けたことから、「西」は「位の高い場所・人」への敬意をイメージさせる。この詩では、南昌尉の「南」に対応して使われていると思われます。

 

野花看欲尽

野の花は、看れば咲き尽くそうとばかりに開いている。

 

林鳥聴猶新

林の鳥は、鳴くたびにまた新鮮に聞こえる。

 

別酒青門路

この春をずっと君と味わっていたいものだが、見送りの別れ酒もいよいよ終わり。

城外のこの青門路、この先は、はるか君の行く地(韦城)へ遠く続いているのだね。

・青門:中国の都市は城郭都市ですから、四方に壁がめぐらされ、城門があります。(小さな地方都市では、壁は形ばかりで門だけがあることも)

大都市長安は、東西9.6㎞南北8.6km、壁の厚みは6mくらいで、東西南北各面に3門ずつ12の城門があったそうです。

時代にもよりますが、色と季節と方角には関連があり、

青-春-東

朱-夏-南

白-秋-西

玄(黒)-冬-北

となります。

青春白秋などの言葉は、これに由来します。

青門は本来「東の門」ですが、単に城門を指すケースもあるそうです。

・青門路:城内市中の道ではなく、青門の外の、「地方、郊外への路」。

詩人は、見送りのため友の李少府に同行して、野花や林の鳥の声が聞こえる郊外の駅亭まで来ていることが窺えます。

※唐代の詩人・劉嘉(867~)の詩「青門路」は「青門有帰路」(青門には故郷に帰る道がある)で始まります。

青門路と言う言葉には、送別・距離・帰郷などのイメージが生まれます。

また、青門路と下記の白馬津で"色の対"が見られます。

 

帰軒白馬津

君の乗る馬車は帰る、白馬津へと。

・白馬津(バイマジン):現在の河南省滑県の北。は川の渡しのこと。

白馬津は、黄河の渡し場の役目をもって発展した地。

ちなみに、河は黄河。江は長江。それで中国大陸のどのあたりか何となくイメージできます。

・軒:屋根付きの比較的立派な馬車。馬は4頭。貴人や役人が乗ります。単に馬車とも。


相知無遠近

(いや、友よ、悲しむまい。)相知る仲、友人同士の我らには遠近は無いのだ。

 

万里尚為隣

万里の距離でさえも隣と同じなのだからね。

 

◆◆◆

この詩の主眼は、最後の聯の

「相知無遠近 万里尚為隣」

「友人である我々には距離など無い、たとえ万里であっても隣です」と言う部分にあります。

中国では、近年、外交の場で周近平氏が何度か引用し、教育の場でも知っておくべき名句・詩句となっているようです。

日本では、Covid-19 禍中の2020年3月、中国側から日本に贈られたマスクなどの医療用支援物資の荷にこの句が添えられていた事で、知名度が上がりました。

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3月27日の朝日新聞"天声人語"より

詩人と李少府は、青門路を共にどのくらい来たのでしょうか。

宴席や盛りを迎えた春の描写から一転して、別れ・街道の路・馬車が詠われ、これから先の距離と旅を想起させます。

尾聯(最後の2行)の味わいが増しますね。

 

◆"万里梦同心"翻訳解説


では「万里梦同心」の歌を改めて聴いてみる前に歌詞(原詩)の解説を致します。

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歌の冒頭は、延々と別れを惜しむさまの描写です。

 

モチーフは、ほととぎす。そして渭城

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・柳:「柳を折る」とは、別れの場で柳の枝を折りとって環状にし、或いはそのままで旅人への手向けにした風習です。

一つには、"無事に帰還するように"という祈り。

一つには、柳で魂をつなぎ止め、"疲れや事故などで魂が体から離れて消えてしまわないように"と言う道中の無事を祈るおまじない(日本の「魂(たま)むすび」に類似)。

・渭城の柳歌詞1行目に出てくる「渭城の柳」には、だれもが唐の詩人 王維/おういの詩「送元二使安西(元二の安西に使ひするを送る)」を思い出すでしょう。

中学の教科書などにも載っている、送別の詩の代表です。

渭城朝雨浥軽塵
客舎青青色新
勧君更尽一杯酒
西出陽関無故人

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「元家の二男の君が、使者として西の辺境である安西に行くのを見送る」

渭城の朝の雨が土埃を潤して 旅宿、そばの柳もすがすがしく、色鮮やかだ。(昨夜、送別の宴をもち、今朝はいよいよ君ともお別れだ)。

別れの際に君にすすめる、もう一杯、酒を飲みほしてくれたまえ。

西へと陽関を出たら、もう、知人友人はだれもいないのだから。

使者ですから、用を果たせば帰ってくるはずなのですが、西の砂漠の向こうの安西に行くので、旅路の遠さと孤独は、ほかに比べるものがありません。

玄宗皇帝時代の安西は今の新疆ウイグル自治区のオアシス都市クチャと言われます。

山を越えれば、アルマトイがすぐそこ。

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さて、このように、「渭城」と「」となれば、「別れ」の様子がぱっと脳裏に浮かびます。

王維のこの詩は、"名残りを惜しむ別れがたい別れ、友人知人もいない孤独な旅"を詠んだものなので、「悲しむまい、離れていてもお隣だよ」と詠んだ九齢のものと好対照で、しばしば比較されます。

渭城は地名。長安の都の西。黄河の支流である渭水の北岸にあり、西方へ向かう人の見送りはここまで来るのが慣習でした。ウェイチャンと発音します。上述の「送韋城李少府」の韋城と同じです。

更に、ここで想起される西方の旅は、カザフスタンにも通ずるシルクロードの旅。

なかなか、巧妙な仕掛けがあるように思います。

 

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・杜鵑/ホトトギス:鳴き声が鋭く、口の中が赤いので、悲しみで血を吐くまで鳴き続けるという説話・古事があります。

また、帰りたくても帰れない不如帰(ホトトギス)の説話や、望郷の思いなども連想できます。

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「別れの手向けとする渭城の柳、これを何本折って無事を祈っても足りない。

山巓を流れる雲は、旅立つ君を追いかけているように思えて、いつまでも行方を眺めている。

喉から血が出るまで啼き続けるというほととぎすの声音は、まるで私の悲歌のようで、ずっと聞いてしまう。

君を想って相思琴を弾く手は、いつまでもいつまでも止めることができない。」

ここまで悲しんだ歌ですが、ここで転機が訪れ、九齢の漢詩"送韦城李少府"が示されます。

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别酒青門路 

帰軒白馬津

相知无遠近

万里尚為隣

 

歌のはじめは微妙な哀調が出ていましたが、九齢の詩が提示された後は晴れ晴れとした歌になりました。

さて、
お隣にいるのと同じなのだから、悲しむことはないのだ

とは言うものの、現実には遠く離れている友人を想いつつ、どう過ごしたらいいのでしょうか。

 

歌は、こう続きます。

「秋には、明月(名月)に、中秋の祝福として"優しい光を君に射せ"と頼もう

春には、新春の燕に黄梅の花を持たせて遣わし、一緒に祝おう」

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「明月」は、必ずしも秋とは限らないのですが、「祝福」の光を射せ と歌詞にあるので、旧暦8月15日 中秋節ととらえ、春秋で対比してみました。

(春節は新月で始まるため、春の明月は少々考えにくいのです)。

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歌詞に出てくる「迎春ウェイチュン」の花は、お正月用の花という一般名称ではなく、黄梅 オウバイの漢名。

日本でも迎春花といわれています。

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◆そのほかの詩句

東往西来:あちこちに行き交う

天南地北:生活の場がそれぞれ遠く離れている/遠く隔たった各地

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高らかに歌われるフレーズは、

山河万里遠 咫尺玲瓏

「住む土地は遠くとも、美しい澄んだ心ならば すぐそばに」

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咫尺(しせき):極めて近いこと。咫(あた)は親指と中指を広げた時の長さ約25㎝くらい

玲瓏(れいろう)は、翻訳字幕には反映されていませんが、も、澄み切った美しく輝く玉。玉などが透き通るように美しく輝いているさま。

このわずか5文字の歌詞には、「あなたの心も玲、私の心も瓏として、お互いが同じように美しい心でいれば」という戒めがあるような気がしてなりません。

なお、余談ですが、将棋界の永世七冠、羽生善治棋士は、しばしば、座右の銘?として、色紙に「玲瓏」と揮毫しますので、その世界では非常に有名な言葉です。

 

歌の最後のフレーズ

「築得同心夢  千門万戸春」

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これは、未来への夢であり、人間の使命といえるでしょう。

玲瓏たる心をもって距離をなくし、

すべての人々に幸せが来ますように。

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↓ 公式動画はこちら(日本語字幕付き)

※日本語は当クラブ提供です

youtu.be

◆春在千門万戸中


このブログの冒頭に掲げた「春在千門万戸中」は、清の詩人の葉燮の『迎春』と言う詩です。

律転鴻鈞佳気同

肩摩轂撃楽融々

不須迎向東郊去

春在千門万戸中  

世の中が、きちんと治まり、均しく公平で平和となり、

皆が仕事に生活に活気あふれて、悠々として過ごせるのであれば、

春をわざわざ、東の郊外に迎えに行く必要はない、

すべての家々の中に、もう満ちているのだから。

◆◆◆

文:まつりか

 

★★★

2021年11月28日

TOKYO JAZZ 20thにオンライン出演したディマシュの、

日本語"行かないで"のパフォーマンスを是非ご視聴ください。

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↓【行かないで】作詞家/松井五郎氏より

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